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「黒い看護婦」魔性の女が繰り広げる戦慄の事実に迫る傑作小説! [小説いろいろ]

2001年8月に福岡で起った、4人の元看護婦による保険金殺人事件に迫るノンフィクション小説。
今年読んだ本の中では5本の指に入るね、これは。必見中の必見!!!

黒い看護婦

黒い看護婦

  • 作者: 森 功
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/11/25
  • メディア: 単行本

事件の概要は、主犯格の元看護婦吉田純子が、幼馴染で同じ看護婦である堤美由紀から金を騙し取り、さらに学生時代の看護婦仲間だった石井ヒト美、池上和子からも詐欺で金を巻き上げる。

これだけでも、酷い話なのに石井ヒト美、池上和子は純子の指示に従い、なんと各々の夫殺害を自らの手で実行し、その後は吉田純子が「女王様」として、堤美由紀、石井ヒト美、池上和子の3人を下僕として従え、自身のマンションに住まわして身の回りの世話から金の世話までをさせていた。

しかも、純子は3人の子持ちながら、堤美由紀に同性愛(レズ行為)を強要し、2人の肉体関係は10年以上にも及び、性欲の強い純子は夜な夜なセックスを求めてた。。。

これだけ読んだだけでもスゴイ「ドロドロ感」が伝わるかと思いますが、実際の詳細はもっと強烈。

前回紹介した桐野夏生作「OUT」でも、4人の主婦が殺人や死体遺棄に染めていく過程が克明に描かれていましたが、この小説を読んだ時「まあ、実際に死体解体を手伝う主婦はいねーよなー」っと思ったのですが、とんでもない!、死体解体(遺棄)どころか、実際に殺人を手伝うんですよ。

主犯の吉田純子がとにかくスゴイ人物で、学生時代から虚言壁を持ち、そのまま大人に成長して詐欺行為を次々に重ねていく。さらに、この女のスゴイ所はその虚言を使って、堤美由紀、石井ヒト美、池上和子らを次々に騙し、金を巻き上げて、殺人まで行わせてしまう。

オウム真理教の麻原もそうですが、自身が直接的に殺人行為に及ぶのではなく、「マインドコントロール」によって他人を操り、その他者によって実行をさせてる。
そう、この主犯である純子はまさに「女・麻原彰晃」なのである。

事件に関わってしまった、堤美由紀、石井ヒト美、池上和子ら3人は、元々は平凡な主婦であり、人柄て的にも「控えめ」「地味」「気が弱い」など、決して殺人など出来る人間ではなかったはず。
しかし、純子という「悪魔」に関わったことから、皆、自我を失い人間として堕落していく。。。

私は「殺人」と言うもの大変興味があり、この手のノンフィクションをよく読みます。
「殺人に興味がある」と言うと、「え、ピカチュウさんは変人?ヤバイ人」っと思うかもしれませんが、私が興味あるのは「殺人そのもの」ではなく、「何故、殺人に至ったのか?」と言う、その「過程」であり、殺人に手を染めてしまった人間の「心の闇」に大変興味があります。

人間って、誰しも自分の思い通りに行かない障害物があると、それを疎ましく思い、払いたいと思うものだと思う。その障害物が人間だった場合、「死んで欲しい」「殺したい」と思うことはあるはずだが、実際に「殺す」と言う行為にまではいかないはず。

「殺したい」と言う願望・欲望が、「殺す」と言う事実行動に至るまでの、人の「心の葛藤」や「心の闇」の真実にもの凄い興味があるんだよね。

ちょっと話しがディープになってしまいましたが、とにかくここに登場する4人の女達の心の葛藤や犯行の手口、さらに純子の実母の呆れた発言など、マジでスゴイ小説です。

■純子の夫の会社の同僚が仕事中に他界し、それについての純子と実の母親と美由紀の会話。

純子「(無くなった同僚の)奥さんにとっては、(旦那が死んで)かえって良かった」
母「どうして」
純子「労災保険がおりて悠々自適(の生活)らしいよ」
母「そりゃあうらやましい」
美由紀「でも、奥さんは寂しいんじゃないかね、旦那が死んで」
純子「そんなことない。子供が三人おったら、男なんかもういらんよ!」
母「そうそう、何も役に立たん他人(夫)は、おらんほうがいいよ、美由紀さん」
美由紀「・・・・・・・」

※本文を抜粋の上で表現は省略化してますが、ほぼこのイメージ。

悪魔と化した娘・純子。またその母も悪魔を産んだ魔女なのかも知れない・・・

■追記:新潮社のサイトに当作品の立ち読みがあったのでリンク入れときます。
      気になった方はちょっと読んでみてね~

http://www.shinchosha.co.jp/books/html/4-10-472101-8.html

オススメ度:★★★★★




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コメント 15

ピチュー

こんにちは。いつも楽しく読ませていただいております。(中村獅童の結婚ネタくらいからの読者です。^^)今回ははじめてコメントさせていただきます。
ピカチュウさんのお話を聞く限り、とっても面白そうで興味がわきました。
信じられない事件ですが、かなり話題になりましたよね。
個人的には純子よりも母親について詳しく知りたいです。
by ピチュー (2005-10-19 09:11) 

tappei

面白そうですな。おいらにゃ、そんな迫力のある感想文は書けません。
ましてや、「文庫本になったら買おうかな~」というひきつける文章もかけないのであります。(いと悲し。)
by tappei (2005-10-19 11:41) 

aiaiai

すごい!!!!殺人に至るまでの心の闇、あたしも興味があります。
だってそうそう踏み切れるラインじゃない。
(と思ってますが最近どーも違うこともあるみたいですけど・・・・・)
ものすごい吸引力、それがカリスマなんですよね。。善悪は別にしても。
by aiaiai (2005-10-19 12:35) 

くまくまちゃん

こわい・・・。あの殺人事件はすごかったですね。同じ職業のものとしては情けないキモチ・・・。
by くまくまちゃん (2005-10-19 18:36) 

kn

こんばんわ
そうですねぇ あたしも「なぜ行動を起こしたのか?」とか
周りが非常に気になります 特にホントにあった事件とかだとなおさらですっ
by kn (2005-10-19 20:16) 

arukakat

これは面白そうだ・・・。
しかもノンフィクション。
気になる・・。
by arukakat (2005-10-19 23:41) 

ピカチュウ

>ピチューさん
初コメント、超嬉しいです~♪
TVでの報道は何となく、面白おかしく報道してる感はあったけど、実際の事件内はホントにエグイし、人間のなせるレベルと超えてますよ。
純子の母の話は少ないのですが、彼女の発言はマジで頓珍漢というか、現実を全く理解してないんですよ。どーしょーもない馬鹿母。

> tappei さん
そんな、そんな、過大評価、恐縮です。。。
文章書き出すと感情が入り込みやすいタチみたいです。

>aiaiai さん
だってそうそう踏み切れるラインじゃない。
↑なんだよね~。
人としての「理性」がある以上、ここを超えるのはちょっと想像し難いんだよね
これね、とにかく女性の方は必見だよん!

> くまくまちゃんさん
同業者となれば、彼女たちが殺人を行う際に看護婦としての知識や経験を生かす事に腹が立つでしょうね。
だってさ、本来は「人を救う」為の医療技術なのに、彼女らは「人を殺す」為の医療技術にしちゃった訳だからね。

>knさん
普通の主婦で子持ち、しかも看護婦が夫を睡眠薬で眠らして注射で殺害。
こんな行動を何故起こすことが出来るのか?
同じ女性としてはどう思いますか?ホント信じられませんよね~

>arukakatさん
気になるでしょ~。
記事に新潮社の立ち読みリンクを追加したので、ちょっと読んでみてちょ!
by ピカチュウ (2005-10-20 00:22) 

くまくまちゃん

そうですよ。まさに怒りですね。ピカチュウさんがくまのこのもやもやっとしたキモチをまさに代弁してくれています!以前仙台で筋弛緩剤で殺人がおきましたが、あれも衝撃でした。大学へむかう通り道の病院、しかも犯人の家は近所?(住所が近かった。)自分は看護学生・・・やりきれませんね。
by くまくまちゃん (2005-10-20 19:58) 

ピカチュウ

大学へむかう通り道の病院、しかも犯人の家は近所?
↑えーっ、そうなんだ、それは衝撃的!!
医療関係者の事件はなんともやるせない気になるよね・・・
ちなみに、犯罪者と言えば私の家から3分の所に田代まさしが住んでました。
by ピカチュウ (2005-10-20 23:37) 

うめの

こういう記事を待っていました!
これは面白そう。ぜひ読んでみたいです。
読んだらトラバさせてください。
by うめの (2005-10-21 19:26) 

ピカチュウ

ホント、読んでみて~
この女たちの関係は、どんな小説(フィクション)にもかなわないから。
by ピカチュウ (2005-10-21 23:51) 

arukakat

読んでみました。
ん~怖いですねぇ・・・男としては余計に・・。
確かに、
「そうそう、何も役に立たん他人(夫)は、おらんほうがいいよ、美由紀さん」
このセリフはちょっと・・・。
by arukakat (2005-11-17 22:25) 

ピカチュウ

お、読んでくれましたかぁ~。
女っていざとなるとホントに怖いよね。
ある意味でヤクザよりもたちが悪そう。
「そうそう、何も役に立たん他人(夫)は、おらんほうがいいよ、美由紀さん」
↑これ、ドン引きしちゃわない?
子を持つ母親の発言とは思えないよなぁ
by ピカチュウ (2005-11-18 09:44) 

neroli

この事件、すごく心に残っています。
関係性を聞けば聞くほど、不可解だったのを覚えています。
なぜ逃げなかったのか?とすごく疑問に感じました。
こんな本が出ていたんですね!
早速、謎の解明のために、読んでみたいと思います!
by neroli (2005-11-28 00:36) 

ピカチュウ

関係性を聞けば聞くほど、不可解だったのを覚えています。
↑まさに、そうなんですよ、私も。
「どんな人間関係やねん!?」って思ったもの。
この本を読むと、その辺りの所がある程度明確になるので、必見!
by ピカチュウ (2005-11-28 12:36) 

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