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「マラケシュ心中」 天分の作家・中山可穂 [小説いろいろ]

「マラケシュ心中」/著作:中山可穂

マラケシュ心中

マラケシュ心中

  • 作者: 中山 可穂
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/05
  • メディア: 文庫

↑この装丁だけでも素晴らしくない?

年間100冊以上の小説を読んでいるので、それなりに多種多様な作品、作家に出会ってきた。
その中、昨年出あった作家で、私の心を捉えて離さないのはこの人だけ。

中山可穂。

作品の主題が全て女性同士の恋愛だとか、性愛の表現が生々しいとか、作者自身も同性愛者だとか、ある種のスキャンダラスな部分ばかりがクローズアップされて、本当の意味での評価がまだまだ低い。

「マラケシュ心中」は、詩人である主人公・絢彦(女性)と彼の師匠である人妻・泉との究極的な愛の物語である。

この2人の愛の遍歴には、もう普通の人間では理解不可能な域に達しており、ここで提示される恋愛の世界感は、中山可穂の他作品と比較しても濃密で完成度の高いものになっている。

また、彼女は非常に寡作な作家で、現在出版されている著作も同じ頃デビューした作家と比べてもダントツに少ない。

それは何故か?

これは私の勝手な憶測だが、彼女は自分の生き方というか、資質すべてを小説という表現によってさらけ出している為、1作を生み出すエネルギーが他の作家とは比にならないのでは思う。

同じような年代の女性作家、村山由佳や唯川恵とかくらべても、作品あたりの濃度が本当に違う。別に彼女らの作品が悪いとか、つまらないという訳ではないが、(村山作品は。。。だがね)やはり読後感が全然違うんだよね。

中山可穂の作品をもっと沢山読みたいとは思うけど、読む側も心して読まないとこちら側のエネルギーも消費させられるし、先生自身も量産することは難しいだろうから、年1冊ペースでかまわないので、選ばれた天分の小説家だけが生み出せる作品を提供しつづけて欲しい。

ちなみに、彼女の作品を未体験の方は、

「猫背の王子」/★★★★☆
「サグラダ・ファミリア」/★★★☆☆

あたりかたからどうぞ。

私個人のベストは、

「白い薔薇の淵まで」/★★★★★

です。

オススメ度:★★★★☆




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コメント 20

瑠璃子

中山可穂大好きで、サイン会までいったクチです。弱法師もいいっすよ。
私も「白い薔薇の淵まで」がベストっすね。アレは何度読んでもこみ上げてくるものがあります…。
by 瑠璃子 (2005-03-10 10:59) 

ピカチュウ

瑠璃子さん、どうもっス。
これだけPV増えてるのに、この記事への共感者がいなくて寂しく思ってたので、まじでうれしい。
「弱法師」も読みました。
内容もさることながら、装丁が素晴らしい!
より多くの人に彼女の本を読んで欲しい、そう切に願う。。。
by ピカチュウ (2005-03-10 17:28) 

たれめん

マラケシュ心中を読んで中山可穂さんのファンになりました。
他の小説も読んでみたいと思い検索してたらこのブログに行き着きました。

まずは「白い薔薇の淵まで」から読んでみようかなとおもってます。
by たれめん (2005-05-03 21:03) 

ピカチュウ

是非、読んでください。
比較的分量も少ないのですが、文章密度はホント濃いです。
最近、「弱法師」も読んだのですが、これもまた傑作でした。
彼女の才能はマジで底なしですね。
by ピカチュウ (2005-05-04 21:29) 

きらら

 それでもやはり、「感情教育」ははずせないっ♪(^0^)
by きらら (2005-05-17 00:22) 

ピカチュウ

だよね~。うん、うん。
そう言えば、「感情教育」の文庫版発売されたね。
単行本も持ってるけど、買わなきゃ。
by ピカチュウ (2005-05-17 10:23) 

neroli

ピカチュウさんのおかげで、この本に出会えました。
ラストには泣けました。だってこんな終わり方想像していなかった
から・・・。嘘臭さが一気に消えて・・・。もう、すごいです。
弱法子もよかったです!
by neroli (2005-06-15 02:28) 

ピカチュウ

読んでくれましたか~~~!
超~よかったでしょ!
ラスト、二人が紆余曲折を経再び出会うシーン、私も涙が流れましたよ。
彼女って、やっぱしまだまだマイナーな感じだし、扱う世界が同性愛ということもあり、なんとなく過小評価されてるけど、1冊でも読めばその圧倒的な才能に気づくはず。
いや~、私のブログで彼女のファンが生まれて、ホント幸せです♪
逆にありがとうですぅ~
by ピカチュウ (2005-06-15 22:24) 

ちい

私も、去年初めて本屋で中山可穂さんの本に出会ってからすっかり虜になりました。                                           続けざまに出版されてる著作を全て読みましたが、どの作品も本当に素晴らしかったです。 彼女のことを知っている人が周りに居なくて、淋しかったのですが、今日このブログに出会い同じように感動している人が居るとわかって、とても嬉しかったです!
by ちい (2005-07-03 14:27) 

ピカチュウ

彼女のことを知っている人が周りに居なくて、淋しかったのですが
↑そうなんだよね~、私の周りにもいなくって。。。
でも、ブログのおかげでお仲間さんに出会うことが出来てホント嬉しいです!
ちいさんと同じ気持ちですよ、私も♪
by ピカチュウ (2005-07-03 22:38) 

tap

中山可穂の記事にこちらで出会えるとは・・・。
私も数年前からはまって、買い漁ろうと思ったら・・・本当に寡作な作家さんですよね。そして読んでいる人も確かに周りには少ない・・・。
振り絞って書いている、作品を書きながら彼女の小説の主人公たちのように疲弊しきってしまうんだろうなという感じをうけますね。
技巧的とは思わないんですが、ありふれた言葉で胸を締め付けるような美しい表現をする人だと思います。ハードカバーの本は買わない質なので、(収納に困るので)文庫しか読んでないですが、出会いは「サグラダ・ファミリア」、好きな作品は「感情教育」ですね。
by tap (2005-09-17 15:11) 

ピカチュウ

おお、so-netブロガーでは久々のお仲間さんですね~。
私も基本的に文庫派ですが、彼女だけは単行本も併せて買ってます。
にしても、新作でないよね~。
前作が「弱法師」だから、もう1年以上だもんなぁ~。
年末には何とか出して欲しいっす!
by ピカチュウ (2005-09-19 17:19) 

新作まだかな

初めまして。
恥ずかしながら、ようやくネットデビュー。
そして、初サイト初コメントしちゃいます。
嬉しいっ!
こんなに中山可穂を応援している人がいるなんてステキっ!
私は『猫背の王子』から愛読しているんですが、可穂ビギナーには
『深爪』をすすめています。
『マラケシュ心中』は、私のなかで直木賞イチオシ!
そうそうこの表紙、素晴らしいですよね。
風景の写真なのに、女性のなめらかな肌を連想(…妄想かな?)
しちゃいます♡
by 新作まだかな (2005-11-05 08:35) 

ピカチュウ

初デビューおめでとです~♪
私のブログの中でも多分、一番根強いコメント歴を重ねてます。
それだけ、コアな中山先生ファンがいるんでしょうね。
先日、町田のBOOKOFFで「マラケシュ心中」が100円で3冊も売ってたので全部買占め、友達に配りまくり、宣伝しまくりました~
にしても、新作でないよなぁ・・・
by ピカチュウ (2005-11-06 13:40) 

新作まだかな

エラい! エラ過ぎるっ! 友達に配りまくるなんて…。
もしかして、中山ワールドの宣教師ですか(笑) 
あまりにも寡作なんで、書かせる編集者も、さぞ辛かろう…。
 →ますます熱望 →ますますコアなファン →まだ出ない
   →ひたすら待つ →発売と同時に飛びつく →さらにのめり込む 
他にも好きな作家はいるのに、こんなに待ちわびる作家はいないね〜。 
by 新作まだかな (2005-11-07 07:48) 

ピカチュウ

友達に「素晴らしい作品だよ」と口コミしても、「レズ小説だろ?」とか言って前々読んでくれなかったので、もう無理やりにでも渡して読まそうと(苦笑)
→ますます熱望 →ますますコアなファン →まだ出ない
   →ひたすら待つ →発売と同時に飛びつく →さらにのめり込む 
↑まさに、私ですね。編集者の思惑のまま
by ピカチュウ (2005-11-07 12:38) 

英理緒

ワタシも新刊待ち焦がれてます。どれも甲乙付け難いけど、ワタシのおススメは、「花伽藍」の中の「燦雨」です。自分がホームヘルパーのパートしているので、いつも以上に、染み入りました。ワタシには公務員の夫と子どもがいますが、人妻である恋人もいます。いつか子ども達の手が離れたら、この二人のように静かに共に暮らせたらと、思います。
by 英理緒 (2005-12-06 11:49) 

ピカチュウ

短編集としては、私も「花伽藍」が好きですね。
ワタシには公務員の夫と子どもがいますが、人妻である恋人もいます。
↑なんか小説の世界のような話だけど、現実にあるんですね。。
はやり、本当に好きな人と静かに暮らせるって、素敵なことですよね。
年齢や性別、職業、人種に関係なく、ね!
by ピカチュウ (2005-12-07 09:20) 

英理緒

 お久しぶりです、この間まで、別冊文藝春秋で 連載されていた、「ケッヘル」、発売になりそうですか? 田舎者なので、情報が入りにくいのですが、サイン会などあったら、どなたか、是非教えてください。
by 英理緒 (2006-05-25 06:35) 

新作まだかな

中山可穂『ケッヘル』発売中!
待ってました!
待って 待って 待ち焦がれてたのに あっという間に読了。
これまで バシバシと 直球だけを投げ続けていた投手が コントロールと
変化球を身につけて 再びマウンドへ帰ってきた…というか
圧倒的な存在感の「さなぎ」が 遂に羽化してしまった…というべきか。

おピカさん しばらくブログの更新されてませんが、中山本は
チェックされてますよね? 
by 新作まだかな (2006-06-23 21:20) 

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